山原ユキさんの「レゾナンス1.夕色の墜落」の感想をやります。

…いまだ暫定版ですが。

レゾナンス 1.夕色の墜落 (角川スニーカー文庫)

レゾナンス 1.夕色の墜落 (角川スニーカー文庫)

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このやり方でいいのかまだわからないので
いろいろと試行錯誤する予定です。


※↓以下、ネタバレを含みます。


「作品(主にMP)について」


この作品における精神寄生体(MP)は無意識(それもイドとか鬱とか性欲とかの方)を連想させるのですが。
またMPとは自分自身であると作中で記述されていること等からも
フィリップ・プルマン著「ライラの冒険」におけるダイモン(守護精霊)を思い出しました。


ダイモンについて説明しましょう。
ライラの世界では、一人の人間に必ず一体のダイモンがつかず離れずくっついています。
このダイモンという生き物は、見た目は動物の形をしているのですが、
言葉が話せるので、ペットと言うよりパートナーと言った方が当てはまります。

ダイモンは人の心から分離した生き物であり、子供の頃はどんな動物にも変身できるが、
大人になると一つの動物の姿に落ち着く。
ダイモンというのは自我の姿であり、姿がさだまる時、持ち主がどんな人間なのかがわかる。

といったのがライラの冒険におけるダイモンの大体の設定です。



レゾナンスの場合は、絶望や狂気に落ちいってしまった人間のみMP(ダイモン)が使えるという設定なので、
MPは持ち主の精神相応の恐ろしい形をしており、
ヒロインの遠野昼子は、過去の強烈なトラウマにより、自分のイドを認めることが出来ず、
イドに身体と精神を乗っ取られ、異形化する。
このヒロインは自分の無意識・イドに殺されたように感じた。

後半の異形化で
下半身からずるずると何かを出してる様
スクウェア・エニックス「ドラッグ・オン・ドラグーン」のフリアエのように)

最後に主人公によって下半身を破壊され、プラトニックな愛、相手に精神的な何かを求めて終るところ、
などから意識と無意識、思い通りにならぬ身体と精神の葛藤のようなものが感じられた。


ダイモンと設定が似てるだけに
このMP、無意識、イドのようなものは、
被寄生者の経験、心持、つまり人間的成長によって良い方向に成長できないのだろうか、
異形化する前に主人公と仲良くなったヒロインは、それでも死ぬしかなかったのか、と少し疑問に思いました。

最後、主人公が、ヒロインを完全に殺すため、弔う為に、自身のMPである「炎の力」を使うのですが、
彼が破壊願望や絶望以外で力を使うのはここだけなんですよね。
そしてこの炎は、彼が使ってきた炎の中で最も熱い炎だった。
絶望や破壊願望に頼らずとも、それ以外の、奥深い感情だからこそ、より強い力を引き出すことが出来た。
ここにこの能力の救い、別の道があるように感じた。



「挿絵に関して」


挿絵、近くで見ると上手だな、画力があるなと思いました。
ただ、アマゾンなどで、小さい画面で見ると、いまいち構図が映えない気がしました。
所謂萌え系で無い点は好感が持てました。
もしそうだったら作品とあわなかったでしょうし。

挿絵に関して思った事は
主人公は、想像どおりといいますが、
以前デビュー前のサイトで掲載されていた、他の作品でも思ったのですが
個人的には「髪は短髪で、見た目優等生っぽくて、目には正義感の光が感じられるのだが、どこか影が差している…」といったようなイメージを抱いていたんですが、本当にそのとおりで、よく描けてるな、と思いました。

野沢雫は悪役だから、イラストが不細工、少なくともあまり美しくなく描かれているのか…。小説を読んだかぎりで、美しさ・可愛さの点では、昼子と雫が同じくらいで、友子が一番劣っている(前髪で顔を隠しているくらいだから)ように感じたのですが。



「個人的に思った事」



ただ、今回の作品には、作者の力が完全に出ていたとは思えないんですね。
デビュー前の作品の方が、もっと切れ味やアイデアが鋭かったように感じました。

個人的には既存のライトノベル、流行をあまり意識せず、自分の最も得意分野で攻めるべきなのでは、と思いました。所謂ライトノベルレビューサイトをちらっとみたところ
「登場人物の頭がおかしい」とか「闇が濃い」などとかかれていましたが、デビュー前の作品から考えるとこれはまだおさえてる方です。


高校の雰囲気や、登場人物が良く描けていて、日常の場面(4人でプラネタリウムに行くところ)等がおもしろかったです。



※参考文献 フィリップ・プルマン「黄金の羅針盤」 新潮文庫 における 小谷真理「解説 楽園探検の手引き」